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2015.03.17

再掲・PSGのカタストロフと監督解任の話(2004年10月~2005年3月)

ハリルホジッチ解任に至る、PSGのカタストロフの再掲。
2004年を振り返れば、不信に満ちたシーズンの始まりは8月の終わりのこと。副主将を任されたばかりのフィオレズが、突然ヴァヒドの“独裁的性格”を批判して激しく口論、パリを出たいと言い出し、移籍市場の最終日にマルセイユに移籍した。(だからクラブは代わりの選手を補強することもできなかった)
誰もが驚いたこの移籍事件は、まあもちろんマルセイユの裏工作だったようだけれど。フィオレズはヴァヒドのシステムの重要な選手でした。

そこからは壊れた歯車が転がり落ちるようなシーズン。ロッカールームの問題、メディアとの問題、審判との問題…。最終的に、選手達がフランスカップの準備合宿をボイコットしたことで、クラブ側もこれ以上ヴァヒドを庇うのは無理だと判断したらしい。
そこにはサポーターの抗議活動も大きく影響していたのだけど、ただ実際、サポーターの抗議の本当の理由はスタジアムのセキュリティ問題…つまりグライユ会長がチケット販売に身分証明導入を図るなど、サポーターの暴力事件に厳しい姿勢を取っていたことだった様子。その証拠に、サポーター側は会長とその片腕のヴァヒドの解任だけでなく、セキュリティディレクターの追放をも求めていた。

ロテンが言ったように、もう何かを変えなければならない状況だったことは確かで、そういう場合まず首を切られるのは監督だった。まあ結局、それで何が変わったわけでも…

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ニュース更新しました。もちろんあれ(注;先日のエントリのインタビュー)はハリロジッチの言い分であって、選手には選手の言い分があります。ハリロジッチは選手の意見には大抵きつい批判を返すとか、若手ベテランの区別なくものを言うとか、話が長いとかね。(それだけ長々注意しても、DF陣はレンヌ戦でマークを怠ったのだけど)
選手に不満があるのは事実。一方で、ピッチでプレーしてるのは自分達であってまず自分達に責任がある、ヴァヒドをクビにしても何もならない、と言っている選手もいます。

一般的に、チームがこういう状態になっている時、特定の誰かだけに非があるというケースはそう多くない気がします。逆に言えば、そんな単純なことではないからここまで混乱してる。
ハリロジッチの「我々は思い上がっていた」という言葉が、いろんなことを象徴しているように思えます。実際以前、ある選手がシーズン初めの自分達に慢心があったことを認めてました。

ハリロジッチはシーズン前のキャンプで選手のメンタリティを評価していたし、その時点ではおそらくトラブルはなかった。その後チームは、監督も含め、開幕後2試合の、判定のあやもある不本意な結果でつまづきあっけなく混乱してしまう。こんなはずじゃない、そして互いに責任を押しつけ合い、不信を抱き、自らの立場を主張する…チームが崩壊する時は、どこも大抵そんな感じじゃないのかな。

それでも最終的に、自らのビジョンにすべての責任を負うべきは監督なのだけど、メディアは昨季調子がいい時は、ハリロジッチの厳格さこそがパリの選手の意識を変えたのだと言っていたし、今季成績が落ち込めば、まさにその厳しさが原因だと言う。軋轢のありようは変わらないのだけど。
結局、ハリロジッチへの批判はルイス・フェルナンデスのケースとそう変わりません。ルイスもまたすべてをコントロールしようとしていると非難されていたわけだし、彼との軋轢でフランスの若手が何人もパリを出て行った。


先の内戦の中を生き延びて、すべてを失ってフランスでまた裏切られたハリロジッチの発する「リアリズム」という言葉には、私はそれなりの重みを感じてます。独裁的だと言われる彼は、本当のファシズムを経験してる。作家の大岡昇平は、「戦争を知らない人間は半分は子供だ」と言った。もしかすると彼には周りが子供に見えるのかもしれない。

欺瞞に満ちたフットボールの世界で、ハリロジッチの言葉には一面の真実があるように思える。彼は自分が何を言ってるかはよく分かってる。おそらく、彼は物分りよく生きるには少しばかり信念が固すぎ、楽天的になるには知的すぎ、世の中を見すぎている…
だけどもうちょっとでいいから柔軟になれないものかなあ。あの頑固さ(よく言えば信念の固さ)、周りもたまらないだろうけど、本人だってシンドイだろうと思うんだけどな…
(2004/10/16)


マスコミはちょっとしたハリロジッチ解任カウントダウン祭り中。
2、3日前には、パリのある選手が匿名でパリジャン紙に「僕達はハリロジッチが出て行くことを望んでいる」なんてしゃべったことが記事になってしまい、当然PSGは蜂の巣をつついたような大騒ぎになりまして、カンデロージュのプレスホールにパリジャン紙の当該記者らが呼び出されて、選手全員から猛烈な逆取材を受けるという、さかしまな光景も見られたようです。

選手、スタッフはとりあえず一致団結していくという方向で意思統一した模様。ハリロジッチに対するマスコミのきつい論調は、ここしばらくハリロジッチがプレスの報道に態度を硬化させていることも影響していると思われます。
ただ世論調査によると、ほぼ半数(45%)のフランス国民は、ハリロジッチはPSGの監督にとどまるべきであると回答しているそうな。(18%が辞めるべき、37%が無回答)

それでも今日のソショー戦が今後を左右するだろうことは必至で、しかもPSGはこの一戦をロテン、エムバミ、ジェペス(以上負傷中)、アルマン(サスペンション)抜きで戦わざるをえず、ハリロジッチはスタンドでそれを見守ることになります。

マスコミのやることはいつだって半永久的なマッチポンプみたいなもので、シーズン途中で監督をかえることは得策とは思えないけど、、辞めなければどうにもならないほど状況が煮詰まっているんだとしたら、それもやむをえないのかも、とは思う。審判団との関係が悪化するとどうなるかはルイスで十分身に染みてるし…
強気なこと言ってるけど、ハリロジッチも過去ストレスで倒れたりもしてるわけで、体の方が心配。パリの監督を務めるのは、ホントに過酷なことなんだよね。


グライユとハリロジッチがパリに来た時、ある程度広い心で見守らなきゃいけないなと思ったのは、彼らには最初から、PSGの巨額の赤字と長年のぬるい体質というハンディがあったからです。再建には時間がかかるだろうし、血も流れるだろうと。
当時ヨーロッパカップを戦うわけでもないこのチームには30数人もの登録選手がいて、契約内容もどんぶりだった。必然的に大勢の選手が放出されました。ヤキンの解雇はまあびっくりしたけれど、あれはヤキン側にも過失があった。

非情に徹する信念がなければできない改革があるのは確かで、歴史上には「変革期の指導者」とでもいうべき人物がいるけど、もしかしたらハリロジッチはそういう指導者なのかもしれない、とも思うのです。
つまり、改革を経て成熟期に向かおうとする組織に、彼のやり方は果たしてフィットするのかということ。でもパリみたいなクラブには、ある程度の規律は必要だと思うけど。

いずれにしても現在、PSG再建の両輪の一方である経営状態の方は上向いているようで、そこはきちんと評価すべきじゃないでしょうか。もう一方のチームの成績の方がアレなわけですが、勝つフットボールができないのは、どこまでが(守備的な)戦術のせいで、どこまでが選手の側の問題なのかは、私などにはよくわかりません。

特にハリロジッチを庇い立てする義理はないのだけど、概して私は、1人で批判の矢面に立って最後に責任を負う監督業の人達の立場には同情的です。というか何より、最近のサッカー界が、代理人の入れ知恵なのか何なのか、自分の権利主張だけは一丁前みたいな選手ばかりになってしまったことにウンザリしているのです。

CSKA戦の直前という大事な時にもかかわらず、エムバミがチームのプレー内容を批判して、PSGを出たいというようなコメントをしたことが記事になりました。不振の責任を回避するために、あるいは移籍や契約の交渉を有利に運ぶために、選手がマスコミを利用してチームやクラブ、監督を批判するようなことは、もう驚くようなことでもない。(注:エムバミはそれから…マルセイユに移籍した)

選手たちは誰も、自分が在籍しているかも分からない5年後のPSGのことなんか考えてないはず。監督に「なぜモリエンテスをとらないんですか?」と聞いた選手もいたと聞いているけど(金がないからに決まっとる)、その程度の認識しかない選手もいるのが現実なわけです。


結局なおざりにされるのはファンなのですが、いずれこのスポーツというか業界も、「フットボールというささやか(?)な商売の栄華と衰退」って感じになっていくんじゃないかって気はする。
信頼に足るものなど何もないようなところに夢を求める人なんかいないだろうし、ファンだっていつまでも虚構に騙されていてもいいよ、ってほどお人よしじゃないだろうから。
(2004/12/12)


ランス戦はまったくふがいない戦いぶりだったようで(0-2)、失点の場面もディアラがフリーになってたり、なんか集中が途切れてるような感じ。サポーターが一斉にハンカチを振る、カンプノウさながらの光景も見られたとかなんとか。

今季はもう降格しなけりゃいいやと思ってるんだけど、それすらもわかんないですね。誰かが、「パウレタが“会長辞めろ!”の横断幕の前でPKを蹴らなきゃならないような事態は異常だ」、みたいなことを言ってたような気がしますが、もっともです。
何をやっても駄目だという絶望的なムードが蔓延してる気がする。空気を換えなきゃいけない時なのかもしれない…

イストル戦でピショがPKを取られた映像も見ました。今季の判定はやっぱりちょっとねえ。チームが上向いてくるときまって、不可解な判定で水を差されるような状況で、選手がモチベーションを保つのが容易じゃないのは分かる。
審判団のハリロジッチへの心証がどうかということはさておくとしても、判定で問題続きのPSGの試合で笛を吹く審判がナーヴァスになって、行き過ぎたジャッジを招く一因になっている点は否めないんじゃないかな。


一方マスコミは、自分達に口をきかないハリロジッチが気に入らないこともあって殊更に煽ってる。以前アンケートで、「ハリロジッチは留まるべき」という回答が「辞めるべき」を上回った時のプレスは実につまんなそうだった。
ジャーナリストはシーズン前には、「放出した主力選手の穴を埋めたPSGの補強は完璧だ、優勝候補の筆頭だ」と言って誉めそやしていたし、今では、「補強は失敗だった、責任問題だ」と叩いてる。プレスが自分達の書いたことに責任を負ったところなんか見たことない。

ハリロジッチが貝になる前、プレスは内部リークを誘ってチームを混乱に陥れるような記事ばかり書きたてていたし、クラブにはマスコミのプレッシャーからチームを守る必要がある。それでも残念ながら、無駄にマスコミを敵に回してもしょうがない。

何より、一番きっついプレッシャーがサポーターなんじゃないかっていうのがPSGの厳しさなんだよね。まあ、ブローニュとオトゥイユが一致団結したというのは、理由はどうあれ画期的なことかもしれない…
(2005/2/7)


ハリロジッチ監督がついに解任。
監督の去就は日曜のフランスカップが正念場と見られていましたが、選手のボイコットもあって決断が早まった模様です。ロテンら主力の復帰を待たずしての解任となりました。

しかしサポーターの圧力にクラブが屈したと思われかねないのは、あまりよくない前例じゃないかという気もしますね。そういう意味では、解任は遅すぎたのかもしれません。
(2005/2/9)


このサイトを始めてたった2年で、2人の監督を見送ることになろうとは思ってもみなかったな。でも、最大のプレッシャーと言ってもよさそうなサポーターとクラブ間の問題は、ハリロジッチの解任で解決したわけでは全くないようで。

サポーターの抗議行動のことはパリジャン紙がよく取り上げているけど、ここは大抵、抗議行動を煽るような書き方。彼らの情報提供で記事を書いているようだから当然か。オトゥイユとブローニュが協同して弁護士を立てて、クラブに対話を求めたりしているとかなんとか。

この成績じゃ文句も出るよね、とは思うけど、実際のところは記事を読んでも、サポーター達の口から出てくるのはチームのパフォーマンスのことよりも、スタジアムのセキュリティ問題のことばかり。サンテティエンヌ戦では、身元証明を拒んだサポーター達がスタジアムに侵入しようとして機動隊が出動、なんてトラブルもあった。
なんだか変だ。どんな根拠があるのか知らないけど、ハリロジッチは「サポーターは金で操られている」なんてことまで言って揉めたらしい。

グライユはサルコジ内相と連動してスタジアムのバイオレンス追放に取り組んできて、ストラスブール戦で対立するパリサポーター同士が大立ち回りをやらかした後も、彼らに厳しい対応をしてた記憶がある。
フットボール観戦に身元証明がいるなんておかしな話だけど、そんな事態を招いたのは誰か、ということになる。

フットボールにはある種混沌とした部分も付き物だとは思うし、パルクのゴール裏の光景もおそらく、パリの都市的現実の一端(移民や極右や失業や)を象徴しているのだろうと思う。 私はパリ市民じゃなく、クラブにお金を落としてるわけでもないからどうこう言える立場じゃないし、彼らがスタジアムで騒いで気を晴らさなきゃならないような、どんな現実を生きているのかも分からない。
でも、試合のたびに「機動隊」とか「衝突」とか「負傷者○人逮捕者×人」なんて見出しが踊るのはどう考えてもマズイよね。クラブがサポーターに対して敬意をはらうのと、迎合するのは違う。

何日か前に、練習場に来たサポーターグループの代表と選手が話し合って和解した、という記事を見かけて、その直後に、選手はフランスカップの準備合宿に行くのをボイコットした。クラブに脅しをかけるようなやり方もどうかと思うけど、選手がサポーターに安易に同調したのでなければいいんだけど。

このところ、私はずいぶん疑い深くなったなぁ…
(2005/2/11)


先日ハリロジッチのロング・インタビューをアップしましたが、昨年10月のあのインタビューの後、選手達は話し合って問題を解決して、チームも一時は上向きました。
思い起こせば昨季、ハリロジッチの「このチームは病んでいる」発言の後も、話し合ってチームは立ち直ってますから、ああいう「こんなことしゃべっていいのか」って内容の会見でも、それなりの効果があるのかもしれません。

しかし今年に入ってからの不振で、状況は以前に逆戻りしていた様子。以下は先月末、ストラスブール戦の敗戦の後で、ロテンとパウレタが語った当時のチームの内状。


「僕達は2ヶ月近く1勝もできなかった。必然的に問題が生じた。全員が少し足を引っ張りあってしまったんだ。僕達はスパイ(プレスに内部リークした選手)探しに気を取られすぎたのかもしれない。エネルギーと時間を浪費して、そのことが、僕達を結束させるよりは逆に仲違いさせてしまった。ハリロジッチに関して言えば、僕達が彼に要求することは、すべて拒まれるような気がしていた。もう話は通じなかった。何かを変えなきゃいけなかったんだ」 (ロテン選手)

「パリは複雑なクラブだ。いつも何か問題がある。言い訳を見つけたり、誰かに過失の責任を転嫁するようなことはやめなければならない。今、僕達は互いに努力を怠っている。全員が共に攻め、守らなければいけないのに、事実はそうじゃない」 (パウレタ選手)
(2005/3/10)

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