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2011.10.18

【ラグビー】 フランス代表の小さな星

2011年ワールドカップ準決勝
フランス×ウェールズ 9-8


「きっとフランス代表を見守る小さな星があったんだろう」(リエヴルモン談)
「ラグビーの神様がついていてくださるんだよ」(さすがに"スタジアムの神様"とは言わなかったパペ談)

フランスは前半の早い時点で15対14の数的優位に立ちながらトライを挙げることなく、ウェールズのキックの不調もあって辛くも勝利。ウェールズの最後の逆転PGは、わずかに届かなかった。ファウルを犯してしまったマスは、その時ボールの行方を見ていなかったという。
「俺はPGは見ていない。ラグビー選手ってのはゲンをかつぐんだ。俺のせいで負けちまうのか、と気が気じゃなかった。恐ろしい瞬間だったよ」

世界一悲観的な国民、フランスのメディアがこの決勝進出を伝える報道のトーンはもちろん「奇跡である」というものです。当然皮肉です。選手スタッフの口から聞かれるのも、「俺達ツイてるよね」といった言葉ばかりですが、実際フランス人が一番驚いてるに違いない。(私も)
試合自体は、ささいなミスが天国と地獄を分ける決勝フェイズにはありがちな展開かなと思う。


「試合が美しくなかったとか、我々がうまくやらなかったとかは、私にとってはまったくもってどうでもいいことだ(まあ感じ悪い)。ウェールズは我々より勝利にふさわしかったかもしれない。しかし我々は決勝に行く。それだけが重要だ。もし同じラグビーをしてチャンピオンにならなければいけないとしたら、我々はそうするだろう」
(リエヴルモン談)

「僕達は勝つために、チャンピオンになるためにプレーしているんであって、誰かを楽しませるためにプレーしてるんじゃない」
(ザルゼウスキ談)

「俺達はProD2の試合をした。フェデラルのいいチームって程度だ。すべてを見直さなきゃならないが、それでも俺は勝ち方はどうでもいいと言いたい。俺達はパラドクスを抱えたチームだ。負けそうなことは全部やったが、俺達は決勝に行く。どのフランス代表もなしえなかったレジェンドが手の届くところにあるんだ。半年前を考えれば、俺はまともに歩くことさえできなかったんだぜ…」
(バルセラ談)

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「(ウェールズのレッドカードについて)このワールドカップの準決勝がバランスを失したことは悔やまれるかもしれない。しかし私の考えでは、あれはレッドカードだ。
(60分間以上数的有利でプレーしながらトライが取れなかったのは)我々がそれを求めず、あえてそうしなかったからだ。15対14で戦うのは、デュソトワールも言ったように、プレッシャーを逆転させた」
(リエヴルモン談)


ウェールズの早すぎる不運な退場は、それが意図したものではなかったにせよ起きたこと自体は十分に危険で、時間帯を考えればためらうレフェリーもいるだろうけれど、一発赤を出すレフェリーがいても不思議ではない微妙な線だったと思います。
ワールドカップの大舞台を台無しにすべきでないという考え方もあれば、世界中の注目が集まるイベントだからこそ厳格な姿勢を示すべきだという考え方もあると思う。いずれにしても、何度もあらゆる角度のスローのリプレイを見た人々がまだ議論しているようなことを、現場では一瞬で判断しなければいけないわけですよね。

この論争については、パディ・オブライエン氏も公式声明を出した。
ローランドのレフェリングは完全にルールにかなったものであり、彼は経験豊かなレフェリーで、起きたことについては非常に明快なビジョンを持っていた。選手の健康がプライオリティである。フェデレーションとチームと試合の役員は皆、危険なプレーの根絶における責任を自覚している…etc.

つけ加えると、記憶によれば、昨季のハイネケンカップのワスプス×トゥールーズで、後半の始めにフリッツがうっかりスピアータックルをやらかした時に迷わず赤紙を出し、フランス側で「あれはちょっとキビシイよね」と言われたのがアラン・ローランド。
元仏インターナショナルレフェリーのジョエル・ジュッジ氏が以前話したところでは、彼はたとえばスクラムでも独自の解釈を持っている。故意性はどうあれ、危険な行為にはルールを厳格に適用するというのが彼の考え方なのだとしたら、アラン・ローランドの前では絶対にやってはいけないファウルだった…

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とにかくこの試合のフランス代表を見ていて思い出したのは、先週そのジョエル・ジュッジ氏が話していたことでした。

リエヴルモンの任期中に無理矢理功績を探すとすれば、1つはディシプリンの確立かと思います。
ジュッジ氏をしばしば招いてアドバイスを受けつつ、まあジュッジ氏を通じた何らかのロビー活動もあったのではないかと思うのだけど、ともかくあの規律なきフランス代表が、このワールドカップでは最もペナルティが少ないチームの1つだという。

ウェールズ戦を前にしたジュッジ氏の話というのはつまり、
ディシプリンはフランスの選手にとっては自然な状態ではないので、彼らは常にそれを思い出す必要がある。NZ戦を見れば、フランスはほとんど自陣でペナルティを与えていない。イングランド戦では42分にそれは来た、つまりそれはフランスがボールを持てていたということだ。このワールドカップでは、ボールを持つチームの方がペナルティを取られることが多い。

またジュッジ氏の見方では、フランス代表はあまりルールすれすれのプレーをしない。(これについては選手達はよく「ああいうことは自分達にはうまくできないんだ」と言ってる。やれば即ファウル)
ジュッジ氏は、フランスの選手達はもっとその種のプレーを学ばなければならないだろう、という。たとえば…リッチー・マコウのような。


ここでなぜジャーナリストがジュッジ氏の意見を求めたかというと、この試合の鍵の1つは規律とレフェリングだと見られていたからかと思われます。
実際、フランスは早々に数的優位に立ったにもかかわらず、彼らは「むしろこちらにプレッシャーがかかった」と言っている。こういう展開で考えるべきは、後々ほぼ間違いなくレフェリーによる"帳尻合わせ"が来ることかもしれない。絶対に自陣でペナルティを取られてはいけない。
雨に濡れたグラウンドで、かくして彼らは残り時間スペクタクルを放棄してディシプリンに集中した…?


この試合の最後に印象的だったのは、ヤシュヴィリがボールをタッチに蹴り出して終了の笛が鳴った時、彼に突っかかってきたマイク・フィリップスとそれを止めに入ったメルモズがもめそうになるのを、ヤシュヴィリが押しとどめてフィリップスに握手を求めた場面でした。今後はバスクダービーを戦うことになる両SH。
何人かのウェールズ人はフランスでまた彼らと再会する。そして4年後を目指して、新しい冒険が始まる。

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規律の問題についていえば、ウェールズ戦の後でリエヴルモンをムカッとさせたのは、その夜選手達に外出しないように言っていたにもかかわらず、何人かが出かけていったことらしい。
この話をしてもいいものかどうかわからないが、と"いつもの"前置きをした上で、やっぱり話し始めたリエヴルモンによれば、彼は翌朝選手達に、「君達は時々反抗的でわがままで聞き分けのない、しょうのない悪ガキどもだ」てなことを言ったらしい。いつも文句や愚痴ばかり言って、この4年間自分をまいらせた…

「私は1999年にそういう経験をした。我々は準決勝のお祭りで(対NZ、43-31)4日間を過ごし、一度も準備に戻らなかった。同じことはくり返したくない」

…むしろ当時の代表そんなことしてたんすか。
とはいえ、リエヴルモンはこうも言ってトーンを和らげている。「まあ今回のことはささいなことで、大したことではない。決勝のハンディになるような隠れ煙草やビール数本、おまけにデザート、といったようなものではないからね」
そしてその会見の少し後、TF1の取材に答えたリエヴルモンは、先の彼の発言は「もちろんユーモアだ。大いに親しみを込めてそう言った。彼らはイヤな連中だが、魅力的だよ」

まあチームの団結のためには、憎まれ役を続けるのもいいのかもしれないね。

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この試合の後、フランソワ・フィヨン仏首相はこのようにフランス代表の決勝進出を賞賛。「スポーツでは、政治と同じように、ただ勝利だけが美しい」
まあ権力の世界に生きる人にとってはそうでしょう。ともかくフィヨンとウェールズ人の夫人の間には、フランスの勝ち方については一悶着あったらしい。

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ジョー・マゾは、このワールドカップの終了後に16年間務めた代表のマネージャーの職を辞すことを伝えている。
チームはどんどん若くなり、自分は年を取る。もっと若いマネージャーが後を引き継ぐのがいいだろう…。「最後にタイトルで終われたら素晴らしいね」
フランス代表にとっての1つのサイクルが終ろうとしているのかもしれません。

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Comments

遅まきながら、フランス、ついに決勝ですね。

準決勝の内容やレフェリングについては、当然様々意見や思惑があることでしょう。
ただ、その争点が概ね誤審かどうかではなく、程度の問題(厳し過ぎたか否か)であるという時点で
既に結論を得ていると個人的には思います。

さて決勝です。
フランスは小さくならず、捨てるものは何も無い気持ちで思い切り良くやって欲しいですね。
当たって砕けられれば本望。結果は野となれ山となれといったところと思います。

いずれにしても、この大会を締めくくるにふさわしい戦いを期待します。

Posted by: francefan | 2011.10.19 at 12:40

このチーム状態なら決勝フェイズなんてボーナスだ、という気持ちで見ていたのですが、まさかここまで来るとは。

捨てるものは何も無い…そうですよね。
正直勝てる気はしないけど、最後にいい闘志を見せてもらいたいです。ウェールズ戦の内容が批判されたけれど、ここまで来たらもう周りの声にまどわされずに信じることに集中したほうがいいように思います。
でも怪我しないで帰ってきてほしいですが!

レフェリングはそれが明らかな誤審でなければ、あくまで仮定の上での議論になってしまいますよね。
私はあの局面ではどちらの解釈が正しい・間違いだ、というのはないような気がします。
結局のところは、勝った時にはレフェリングは正しい、負けた時には…ということじゃないのかな…

Posted by: つき | 2011.10.19 at 22:09

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