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2010.06.09

【フランス闘牛、リヒターbot】 メメント・モリのファエナ 

「私が描いたのは、そもそも描くことが不可能な写真でした。死者です。はじめはむしろ、その問題の全体、当時の生々しい現実を描くつもりでした。でも描いていくうちに、まったくちがっていきました。まさに死へむかっていったのです。
もちろん、死が描きえないなどということはまったくありません。死と苦悩といえば、いつだって芸術の主題でしたからね。いずれにせよ、死というテーマ、それを我々が忘れてしまったのは最近になってなのです。結構な生活のおかげでね。」
(ゲルハルト・リヒター 写真論/絵画論)

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闘牛の見方がまだよく分からない。いい牛にうまく合わせているけれど凡庸ではなかろうか、と思うような時に耳が出ることもある。とてもいい牛だけどモビリティがありすぎて、むしろ闘牛士に創造性を許す間を与えない牛がいるように思う。

5月18日のセバスティアンの闘牛は反対に、私はかなり復調してきたと思ったけれどメディアの評はさっぱりしなかった。彼が3日前のようにリスクを冒さなかったせいもあったかも。でも、彼の指先まではりつめた美意識、技術に支えられたイマジネーションの豊かさと比較すれば、若いピナールはまだまだ生硬に見えた。
セバスティアンは楽団の音楽を聴きながら、それに合わせてファエナをしているんじゃないか、と思う場面さえあった。まるで牛とダンスのステップを踏むように。


6月3日ラス・ベンタス、アニヴェルセールのフェリア。セバスティアンは彼の1頭目で耳を1枚切り、2頭目は誰もがグランド・ポルトを確信したものの剣を失敗した。でも、今季私が見ることができた中で、彼の最高のファエナ。
「剣でグランド・ポルトを失った」、とメディアは見出しをつけて伝えていた。たしかにセバスティアンには残念だっただろうけれど、そんなに悲観的にとらえる必要もないと思う。そつのないファエナで剣を決めて耳を1枚と1枚…セバスティアンの闘牛はその種のいわばリアリズムとは異質なものだと感じる。

牛はビクトリアーノ・デル・リオ。セバスティアンのお父さんの牧場の牛はここの血統だったそうで、彼にとっても特別な牛なのではないかと思う。
実際、1頭目のムレタが始まってまもなく、この牛は彼に何かを与えてくれるだろうと思った。彼の闘牛には、その数分後には牛を殺すにもかかわらず、牛との交感としか表現しようのないような不思議なフィーリングがある。牛までもが美しい。彼は牛と話しながら闘牛をする。
私は闘牛を知る前、それは"牛と戦う強い俺"をアピールするラテンのマッチョな趣味だと思っていたけれど、セバスティアンの闘牛はそういったものとはまったく違っていた。

最近のチャットの中で、彼が「牛を殺すのは好きじゃない」、と話しているのが気になっている。彼は狩猟も釣りも、動物を殺すこと全般が好きではない。でも自分の人生は闘牛で、ファエナを完成するためには牛を殺さなければならない。セバスティアンにとって牛はアルテのためのアミーゴであり仲間であり、もし牛が敵だったら芸術作品は作れないだろう、と彼はいう。
剣の失敗は技術か運か、それとも迷いだろうか。いずれにしても、彼が剣を失敗するとき、私は彼が1人の人間だったことを思い出す。

セバスティアンの発言は矛盾しているかもしれない。でも人間の存在も生きることも、本来ひどく複雑で矛盾に満ちていて、それを受け入れる人と認めない人がいる、というだけのことだ。
そして優れた芸術はアンビバレントな葛藤の中から生まれてきたし、私はいつも相反するものを内包したあやうさが好き。死のないところに生はなく、その強烈なコントラストこそが闘牛なのだと。
生と死、聖と俗…人と牛とのかかわりを、ある種の官能性にまで昇華してみせるような闘牛をするトレロは、私が目にした中でも、それほど多くない。

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セバスティアンの1頭目で、ペレラとセバスティアンのキテの応酬は楽しかった。ああいうライバル意識ならいいな。
ガオネラ、タファジェラ、技の名前はよく分からない。ホセ・トマスがインペリアルにやっているのをよく見るのと同じ技だと思う。ペレラは牛を体の前の方で通していたけれど、セバスティアンは脇の下を通しているようだった。

あと、セバスティアンのバンデリジェロ、クーロ・モリーナの代役(?)がいい銛打ちをして、拍手を送られていた。


マリンブルーの衣装がセバスティアン、アップルグリーンの衣装がペレラ。
2人のキテがアレーヌを沸かせる。

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