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2009.12.22

【フランス闘牛】 パードレ・パドローネ

セバスティアンのアルテルナティヴの映像には、カポーテ・パセオの着付けに世話を焼く当時のアポデラード、ホセ・アントニオ・カンプサーノの姿も映っている。最近では手助けがないとうまくカポーテを着られない闘牛士も多いようなのだけど、セバスティアンは練習して、1人で着られるようになった。
セバスティアンが「僕のマエストロ」と呼んでいたカンプサーノと彼は、07年秋に決別した。

セバスティアンは10代の半ばで生まれ育ったベジエの家を飛び出し、国境を越えセビージャのカンプサーノのもとに闘牛を学びに行った。使い古しのカポーテと、フィグラ、マエストロになる夢だけを持って。
カンプサーノは彼を温かく家に迎え入れた。セバスティアンは彼の家族のそばで幸せな2年間を過ごし、多くを学んだという。

カンプサーノは彼を実の息子のように思っていたのかもしれないけれど、むしろそれがいけなかったのではないかとも思う。子供はいつか成長するのだし、ましてセバスティアンのような、強烈な個性と自我を持つタイプは。

「僕達は終った。もうあなたは僕のためにはならない。あなたは僕が必要とする人じゃない」
伝えられるところによれば、セバスティアンは当時、カンプサーノにそう言い放ったらしい。カリでの大怪我の後、不調の中にあった時期。
セバスティアン・カステラは偉大なトレロかもしれないが、恩知らずでファンにもプレスにも冷たい…そう書き立てる闘牛メディアもあった。

彼らの間のことは彼らにしか分からない。しかしセバスティアンにとって、闘牛は一切の妥協を許さない命がけのアルテだ。
10年間。このような言葉でもなければ断ち切れないものもあったのではないかと思うし、彼が言葉をつくろわなかったのは、"第二の父親"に対する最後の誠実さであるようにも思う。彼なりの。

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セバスティアンは闘牛場でいつも1人深刻な面持ちで入場を待ち、唯一笑顔を見せるのは、勝利をせがむ子供に対してくらいだという。
プレスに対してもガードは固い。いったん扉を開いたら、彼らは守るべき敬意を失うから。
「僕は誰とでもハグするようなタイプじゃない。うぬぼれていると思われる時もあるけど、そうじゃない。毎日毎日命をかけるのは難しい」(08年、ル・ポワンのインタビュー)

"自分は孤独な性格だ"─まだカンプサーノと袂を分かつ半年ほど前、エル・ムンドの取材に、セバスティアンはそう答えた。孤独で生真面目。冷たいとも言われる性格は、自分が経験してきた逆境が影響しているのかもしれない、とも。


セバスティアンの子供時代は、ちょっとタヴィアーニ兄弟の映画『父/パードレ・パドローネ』を思い起こさせるような話だ。カマルグ馬の飼育者である、権威的な父親。当時を知る人々は、彼の家は「"ひかえめに言って"難しい家庭」だったという。
セバスティアンは多くは語っていないけれど、この苛酷な子供時代があったからこそ今の自分がいるんだ、と話している。

『パードレ・パドローネ』の主人公(実在の言語学者)は山小屋の孤独の中でアコーディオンの音を耳にし、幼いセバスティアンはベジエのアレーヌで光の衣装を目にした。
8月15日のフェリア。彼は今でも、バンデリージャを打ち込むニメーニョⅡの姿を覚えている。

セビージャ行きを決めたのはロベール・マルジェだったが、セバスティアンの気持ちはとうに固まっていたようだ。
「自分の夢をかなえるために、僕はあそこを出なければならなかった」
マルジェらもまた、彼にとっては父代わりのような存在だった。セバスティアンは、自分がベジエの家を出ることに、彼らが反対しなかったことに感謝している。いつでも自分の意志を尊重してくれたことに。

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カンプサーノと別れてから、セバスティアンは髪を伸ばしピアスを開け、そしてアレーヌで、型にはまらぬ自分自身のアルテを追求し続けている。
内向的な少年、以前は自分の世界と外部との折り合いをつけるのが難しかったという彼も、成長した。
「大人になるってそういうことだよ。成長が僕を助けてくれている。でも、僕にはまだ落ち着ける時間が必要だ」
(08年、ミディ・リーブルのインタビューに答えて)


少年のころ。あまりカメラをまっすぐ見ないのは今も同じ。

Stc

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