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2008.08.27

ツール・ド・フランスいまさら日記 逃げる男たち

Schum2ヴェリトスさらに逃げて!
今 サンタマン・モンロン。


アタックは男のロマン…なのかどうかは知りませんが、逃げの選手が集団に吸収されるところを見ていると、ちょっと旧約聖書のヨナの話を思い出したりしますね。神様の言いつけが嫌で逃げ出して、大きな魚に飲みこまれるという。
アルプス決戦の後TTまでの間の第18、19ステージは、マイヨジョーヌ争いのチームが無理をしなかったため、そこまでチャンスに恵まれなかった選手やエースのアシストに徹していた選手にとっては千載一遇の大逃げのチャンス。18ステージではコロンビアの仕事人ブルグハートが、19ステージではコフィディスの不屈の男シルヴァン・シャヴァネルが、それぞれ執念のエスケープを成功させて優勝しました。


ブルグハートが逃げ切った第18ステージは、さすがわんわん落車の男、でっかいドイツ人とちっこいスペイン人のサスペンスとエンタテイメントに富んだ珍道中でした。ツールの前半いっぱいをマイヨジョーヌ様のアシストとカヴェンディッシュの牧羊犬仕事に追われたわんわんさんですが、どうやらチームも総合争いから遠くなり、カヴも帰っちゃったしで、3週目は監督から自由が与えられていたようです。
スタート直後からアタックをかけては吸収され、ついに抜け出しに成功。クイックステップのバレードと協調体制を組んで先頭を走り続けますが、残り25キロを過ぎるあたりから、どうやら逃げ切れそうだと踏んだ2人のあの手この手の腹の探り合いが始まります。

山岳に強いバレードが登りでたびたびアタックを仕掛けるも、ブルグハートは集中を切らさない。しかしジャージのファスナーを上げようとしたところでえげつないアタックがかけられた時は、さすがにちょっとアセっていた。いつもはサングラスを外していることも多いブルグハートも、この日はかけっぱなしで表情は読めません。

2人そろってボトルを投げ捨て、残り4キロ付近、バレードの「俺もう前引かないから」宣言で和平条約完全決裂。すぐさまチームカーを呼び監督の指示を受けたブルグハートは、バレードに先行しつつ、しきりに振り返りながら時に牽制、時に挑発。ここまでバイクの人に笑顔でサコッシュのコーラを渡したりとさわやかキャラのわんわんさんでしたが、勝負事にはしたたかであります。バレードはしばらく肩越しに振り向くブルグハートのツラを夢に見るだろう。
息詰まる「だるまさんがころんだ」が続くラスト500メートル、こんな低速なゴール前は初めて見ました。そしてスプリント、これはやはりブルグハートに分があった。ツール初勝利に手を叩いて大喜びのブルグハートの横で、バレードの無念の「ちくしょおおおおお!!!」がジョフロワ・ギシャールにこだまするのだった。来年はガンバレ。


シャヴァネルのステージ優勝がどうしてそんなに感動的なのかという背景が、本放送では今ひとつ分からなかったんですけど、再放送で彼が逃げに逃げて捕まり続ける長い道のりを確認いたしました。いやー、ツール8年目の初勝利おめでとう。

第19ステージは前日と似たような展開で進行し、アタック合戦の末に抜け出したシャヴァネルに、残り85キロ付近でフランセーズ・デジューのロワが合流。スピードアップするメイン集団から2人で逃げまくる様は、あたかもブレッソンの映画※『抵抗』を見るかのような…つまりシャヴァネルの飽くなき逃走(闘争か)は、いわばフランス伝統のレジスタンスだよなあ、と思った次第なのです。
ゴール手前でロワを牽制しながらすでにこみ上げる笑みを抑えきれず、ずいぶん早めのガッツポーズではらはらさせたのは前日のブルグハートも同じ。嬉しいんだろうなあ。ゴール後感極まって泣き濡れる姿が、なにやら可憐でございました。
悲願の成就で燃え尽きが心配されますが、来季はチームを変えて気分一新、また逃げる。

(※ 原題"Un condamné à mort s'est échappé"、直訳すれば「死刑囚は逃げた」。ゲシュタポに捕らえられたフランスの軍人が同室の若者と共に脱獄を試みる、実話に基づいた1956年の映画)↓
A Man Escaped - "The New Prisoner"
http://jp.youtube.com/watch?v=aTzkLuFBxIc


総合争いには直接関係ないけれど、脇役だった選手達が見せた見応えあるレース。こういうステージの存在がツール・ド・フランスを豊かなものにしているんだな。第19ステージで、グルペットの皆さんがえらく楽しそうに帰ってきたのが印象的でした。パリはもうすぐそこ!

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Comments

ブレッソンの『抵抗』、好きです。『少女ムシェット』も大好き。ケスと並んで我が青春の一本。
あ、ブルグハートだったんですね。ブロムハートだと思ってますた。超合金ヒーローみたいなお名前。

Posted by: | 2008.08.28 at 01:06

↑すいません。minacoでした。

Posted by: minaco. | 2008.08.28 at 01:06

私もこの映画好きです。ほとんど独房での脱獄のプロセスをたんたんと追っているだけなのに、厳しい映像の生み出す緊張感には驚きました。ブレッソンの映画は救いのない話が多いけれど、『抵抗』はちょっと違って…というか、ムシェットのあれも完全な救済といえばそうなのかもしれないし、ブレッソンの映画は言い表すのが難しいです。

>ブロムハートだと思ってますた
「わんわん落車の人」で普通に流通しちゃってますよね。体格も超合金で、カヴと並んでるとおかしい。ドイツ人だなあ…

Posted by: つき | 2008.08.28 at 19:24

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