« ツール・ド・フランスいまさら日記 恐怖の超級 | Main | ツール・ド・フランスいまさら日記 逃げる男たち »

2008.08.26

いまさら日記寄り道 自転車とラグビーとドーピングの話

サウニエルドゥバルのリッコがドーピング検査で陽性反応を示した事件は、今年もまたツール・ド・フランスに衝撃を引き起こしました。ドーピング問題に敏感なフランスでは、昨年のツールのスキャンダルの際もスポーツ界全体を巻き込む騒ぎになり、そのすぐ後に開幕した自国開催のラグビーワールドカップは、さながら一大アンチドーピング・キャンペーンの様相を呈しておりました。

4年に1度のラグビーのお祭りだというのに、ドーピングに言及する記事が連日報道されました。実際フランスのメディアが、ラグビー界の禁止薬物の使用に関して何らかの不信を抱いていることは明らかに思えます。
ル・モンドがオーストラリアのEPO検出法の開発者ロビン・ パリソット氏に突撃したインタビュー※は、「ラグビー選手の外観はますますボディビルダー化しています。ボディビルダーに倣って、彼らはステロイドの誘惑に負けたと思いますか?」というスリリングな質問で始まる記事でした。イヤな話ですが、試合の直後に心臓発作で倒れた選手について、これはどうもドーピングを疑っているのではないかという書き方をした記事さえ見たことがあります。
(※ "Sans controle sanguin, le dopage reste une tentation" 「血液検査がなければ、禁止薬物に頼る誘惑は存在し続ける」)


自転車界にとりわけドーピングが蔓延しているのか、単に検査とアナウンスが他競技より徹底しているだけなのか、というのは判断の難しい問題です。実際ラグビー界においては、国によりけり差があるとはいえ、全体的にはアンチドーピングの取り組みは自転車ほどには進んでいないようです。
(関連エントリ:「ドーピングとレトリック」)

従来の尿検査はアンフェタミンやアナボリックステロイド、コルチコイド、テストステロンといった「トラディショナルな」薬物の検出には有効ですが、たとえばEPOなどの使用を裏付けることはできません。ラグビーワールドカップの際の報道キャンペーンで、メディアが強調したのはまさにラグビーにおける血液検査の必要性でした。それまで消極的だったIRBは、このワールドカップの最中に初めて血液検査を導入しました。
(サッカーに関しては、06年のワールドカップの際に血液検査は行われなかった模様)

一方今年のシックスネイションズでは、大会の委員会は現行の尿検査の方法を継続することに決め、現時点で血液検査の導入は「検討中」としました。
ワールドカップの間に約20件の抜き打ち(血液)検査を行ったIRBとは反対に、シックスネイションズの委員会はコンペティション内での検査に集中しています。コンペティションの外では各ネイションの機関(フランスのAFLD、ブリタニークのUK Sports、アイルランドのIrish Sport Council、イタリアのCONI)にお任せで抜き打ち検査が行われますが、たとえばこれらの機関には外国チームのホテルに採取に行く権利がない、といった制限があるようです。


新世代EPOの使用を認めたリッコの、「ツールの間に何度も検査を受けたけれど陽性反応が出たのは2回だけ。検査法が100%信頼できないのは明らか」「僕を一番傷つけたのは自転車界の偽善だ」といった発言は、「こんなことは誰でもやっているんじゃないか」と暗に言わんとしているように取れなくもありません。
苛酷なコース、スポンサーのプレッシャー等々、禁止薬物に手を出さざるをえないような状況が現に自転車界にあるのかどうかは私には分かりません。しかしいずれにせよ、ツールを見ていると、あまりに苛酷すぎて時々「これを楽しんでしまっていいんだろうか」という罪深い気持ちにかられることがあるのも事実です。

プロラグビーにおいてもますます多くのお金が動くようになり、スケジュールも過密化しています。「53~54週間ものシーズンを戦う時に、我々がどのようにドーピングと戦うことができるのか分からない」と、フランスリーグの選手組合長は発言しました。
また今後ラグビーがテクニックやイマジネーションではなく、フィジカルとシステムにますます傾斜していくなら…行き着くところはドーピングかもしれません。


ツール・ド・フランスの相次ぐドーピングの発覚は、大会の存在意義に疑問さえ投げかけましたが、それでもそれは隠蔽されるよりはいい。誰も選手が副作用に苦しんだり、競技中に倒れて命を落としたりするところなど見たくないでしょうし、素晴らしい活躍にまず疑惑を抱かざるをえなくなるような状況はとても不幸です。適切な検査が行われなければドーピングの誘惑は残る、それはそのとおりです。

ラグビーワールドカップの間、フランス代表の選手達はアンチドーピングのメッセージがプリントされたウェアでウォーミングアップを行いました。今月初めには、モンペリエがWall(World Antidoping Life Label)と提携してドーピングと戦うキャンペーンに参加することを決めたそうです。
「ワールドカップの計212のテストでは何の陽性反応も出なかった。我々が何かを見つけるとは思わない。疑いをはらすために検査をするのだ」、とシックスネイションズのアンチドーピング・セクターの代表は語りました。たとえこの言葉が委員会の自己正当化であるにしても、そうであってほしいと思います。

|

« ツール・ド・フランスいまさら日記 恐怖の超級 | Main | ツール・ド・フランスいまさら日記 逃げる男たち »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/91018/42276324

Listed below are links to weblogs that reference いまさら日記寄り道 自転車とラグビーとドーピングの話:

« ツール・ド・フランスいまさら日記 恐怖の超級 | Main | ツール・ド・フランスいまさら日記 逃げる男たち »