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2008.04.14

走者たちはいかに考えたか

Polymp_2聖火リレー、パリでは途中切り上げ、式典も中止
http://www.afpbb.com/article/politics/2375214/2807426
【図解】パリ、北京五輪聖火リレー中断
http://www.afpbb.com/article/politics/2375484/2809866


思い起こせば私が初めて「どうやらフランスはステレオタイプないわゆる“おフランス”ではないらしい」ということに気づいたのは、南部の壮絶な農民デモの映像を目にした時でした。
フランスはなんというかデモ型直接民主主義とでもいうべき伝統のある国ですが、チベット問題に揺れる北京オリンピックのパリでの聖火リレーは、やはり人権保護を訴えるデモによって混乱のうちに終了しました。

7日のお昼にエッフェル塔をスタートした聖火は、最後はバスに乗せられ夕方に最終地点のスタッド・シャルレティに到着しました。
80人の聖火ランナーの1人に選ばれていたPSGのペドロ・パウレタは、このスタジアムでの閉会の式典でトーチを運ぶ映像が見られました。彼は当初あえて一スポーツ選手として、ただスポーツのイメージのために聖火を運ぼうとしていた模様です。

「パリ市から聖火リレーの走者に選ばれたことは大変な名誉だ。もちろん僕達は皆人権には敏感だし、僕もそれを守る。それでも僕はこのリレーを政治的なことにはしたくない。チベットが難しい状況にあるのは本当だ。でも僕がすることは五輪の聖火を運ぶことであって、それはスポーツなんだ」


しかしもちろん、そもそもオリンピックの存在自体が高度に政治的ではないか、というのも本当。レニ・リーフェンシュタールが1936年のベルリン・オリンピックを記録した映画(しかし皮肉にも素晴しい…)を見るまでもなく、ワタシタチはスポーツと政治がどのようにかかわってきたのかを知っています。今ではスポーツはとてつもなく複雑なものになってしまいました。

聖火ランナーを務めたスポーツ選手の思いも様々です。このリレーを取りしきった中国側組織委員会のスタッフに対して批判的な発言をする人もいれば、デモ参加者の行き過ぎた抗議行動を嘆く人もいます。
走者の中で最も人権派寄りのスタンスを取っている1人である柔道家(向こうでもjudokaっていうのね)ダビド・ドゥイエは前者です。

一方ハードル選手のステファン・ディアガナは、デモ参加者の心情に一定の理解を示しながらも、オリンピックのポジティブな価値を象徴する聖火が一部から襲撃されたことに遺憾の意を示しています。
式典に出席したベルナール・ラポルトはスポーツ閣外相として、「聖火を攻撃する者は平和を攻撃している。私は平和的なやり方でトロカデロ広場にチベットの旗を掲げたデモ隊の方を好ましく思う」と語りました。


Jodomiクリストフ・ドミニシは結局聖火のトーチを持って走ることはできませんでした。五輪のメンバーでない彼はあえて、発言を控えるかもしれない他の出場選手の立場に立ち、率直に語りました。ドミニシはデモ参加者のリレー妨害について、スポーツ選手が政治的な主張のために利用されるのを残念に思っています。

「がっかりだよ。(リレーを妨害した)人々がインテリジェントでないのか、それとも彼らにはいくつかのことが分かっていないのか。スポーツマンはスポーツマンだ。中国で起きている問題をコントロールすることはできない。
僕達は※バッジを作って、僕はそれをつけた。でも他に僕達に何ができる?アスリート達はフランスのカラーを着るために4年間トレーニングしてきた。それからこう言われるんだ。『ええ、でもフランス国旗を持ってスタジアムに入ってはいけない。そこで起きていることはよくないから』。

スポーツ選手が利用されるのはよくないことだ。スポーツは美しく崇高で偉大なものなんだよ。政治家は何年も前から中国の問題を知っていて、今さら知ったわけじゃない。スポーツ選手を利用する大勢の人々がいる。僕はそのことを残念に思ってる。
今日、僕は大勢の子供達と一緒にバスの中にいた。そこで子供達は泣いていた。人々は馬鹿だ。というより、何人かがだけどね。全員がじゃない。にしても石や卵を投げるのは重大だと思う。
アスリート達を見てごらん、彼らはそこにいる。聖火を手に掲げることもなく、もちろんみんながっかりしている。」

※ フランスの五輪代表選手らが人権尊重を訴えるバッジを発表
http://www.afpbb.com/article/sports/sports-others/sports-others-others/2374249/2801575

(Q: あなたは国境なき記者団のような組織に対して怒っている?)
「スポーツ選手は政治家じゃない。彼らの知名度を利用してはいけない。今では選手は彼らのものであるはずのお祭りを禁じられている。でもこれは中国のお祭りじゃなくて、スポーツ選手のお祭りだ」

(Q: お怒りのようですが…)
「僕はオリンピックには出ないから言うんだ。他の選手達は言わないかもしれない。それは僕が『君はラグビーワールドカップには出られないよ』と言われるようなものだ。僕はトレーニングしていいプレーをし母国を勝たせるよう求められる。それから政治的なプレッシャーだ…
式典のスピーチの中で、僕達は彼らが全スポンサー名を挙げるのに気づいている。僕達については何一つない。フランスのチャンピオンは、多分メダルを獲得すれば4万ユーロを得ることになる。それは求められた犠牲に比べればお話にならない報酬だ。スポーツ選手はちっぽけな歯車の1つにすぎない。

僕にはこの聖火をかかげるチャンスさえなかった。残念だよ。素晴しいお祭りになるはずだった。それに残念なことだけれど、今日起きたことでは何も変わりはしないだろうし、彼らもそれを分かっているだろう。」


ロズリーヌ・バシュロとドミニシのインタビュー動画
http://www.dailymotion.com/video/x5043b_la-flamme-olympique-a-bon-port-bach_news

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Comments

つきさんごぶさたです。相変わらずいつも楽しみに拝見してますよ。私がぼーっとしてる間にこんなことがあったのですか。ドミも最近ではミスコン(でしたっけ)のプレゼンテーターやら、パリ市長から賞を(ついでに秋波も)いただくやらとすっかり非戦闘員扱いだったのですが、久しぶりに彼の男気が見れて嬉しい限りです。
この件に対する意見はいろいろあるでしょうが、こうして物事を自分なりに咀嚼してきちんと発表できるなんて、国民性というか彼の天然さというか.. うらやましいです。それにしてもこの件に関してだけではなく、近代スポーツに付随するあれこれに彼もうんざりしているようですね。

少し前に拝見しましたが、彼がSFのコーチに就任しそうとか。困りました。私はいい加減なファンですので、ひとたび彼が画面に映ると、他の人がみんなへのへのもへじに見えてしまうのですよ。続報楽しみにしております。

Posted by: パン | 2008.04.15 at 11:43

パンさんこんにちは!ドミニシのこういうところを見ると、彼がなぜサッカーじゃなくラグビーの連帯を選んだのか分かるような気がします。男気、そうですね!
彼にしてもパウレタにしても、問題の重さは十分理解した上で、あえて言っているのですよね。それでも人々にはスポーツが必要なんだよ、と言いたいのではないかと思います。

ミスコン(ミス・フランスの審査員だそうですヨ)の記事はなんかシャバルの代理みたいな書かれ方で、「まー、ドミニシはまだまだ現役よ!(←違う意味で)」と思っちゃいました。来季のことかどうかは分かりませんが、いずれはコーチになるんでしょうね。現役を退いてもベンチで彼の姿が見られればいいなあ・・・。ピンクのマフラーのドラノエさんもそう思っていらっしゃるに違いない。

Posted by: つき | 2008.04.16 at 19:13

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