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2007.10.21

 これじゃフットボールじゃないか

アルゼンチンラグビー代表の国際試合を見ていると、「そうだよなー国歌なんだから歌もあるよな」なんて当たり前のことを再認識したりするのであります。アルゼンチンフットボール代表の国歌斉唱では大抵前奏部分が流される。ブラジルホームの試合とかだとさらに短縮バージョンがあったりする。南米フットの代表戦は基本的にはプチ戦争、相手国の国歌に対する敬意といったものはなさそうな感じである。(ミルトン・ナシメントとジルベルト・ジルが出てきて国歌を歌うなんて場面に遭遇することもあるのでブラジル音楽ファンは要注目)

フランスがスタメンの多くをターンオーバーして臨んだ3位決定戦(フランス 10-34 アルゼンチン)、前半20分くらいまではオッいいじゃん、と思ったんですけどねえ。選手達にモチベーションはあったと思う、でも戦術は一貫性を欠いていたし、ミシャラクの批判に表れたみたいにチームの核となるものが揺れていた。アルゼンチンはフランスのお株を奪う見事な展開で計5トライを挙げて、フランスは67分にポワトルノーが意地の1トライを返したのみ。(前のエントリの追記ですが、ポワトルノーの「アルゼンチンのプレーだってつまらない。彼らはモールとパントを上げることしかできないじゃないか」という発言は、フェリペ・コンテポーミの「僕達はこのワールドカップで、まだフランスのシャンパンラグビーにお目にかかってない。フランス人が僕達は手でプレーしてない、と言ってるのはよく聞いたけど、彼らのブラックス戦でもイングランド戦でも、そんなところは大して見かけなかったね」という発言に対するリアクションです)
内容的には見ごたえがあったけれど、あまり後味のよろしくないことも多々あったのは残念なことでした。この試合がドミニシ達の最後の代表戦になるだろうと思うとやはり悲しい。彼らはもっと敬意を払われてよかった。

イバネスは会見で、試合の間中繰り返されたアルゼンチンのオフサイドと、フランスをいらだたせるための挑発行為に対して、
「メダルを獲得した彼らにおめでとうを言う。しかし、彼らを誉めそやしすぎるべきではない。私にとって、彼らはグラウンドで真のラグビー選手には期待されない振舞いをしたからだ。80分間に2度、私はありとあらゆるスペイン語の侮辱の言葉を学んだ。彼らは勝った時には分別を持たなければならない。彼らはとても素晴しいチームだが、メンタリティはそうではない。またアルゼンチンとの対戦はあるだろうが、我々は金曜の夜に起きたことを忘れないだろう」、と怒りをあらわにしていたそうです。またミシャラクは、
「僕達にはたくさんのトライチャンスがあったけれど、できなかった。こんなふうに終わるのは悲しい。できることはしたんだ。ラックの球出しも何度も何度も遅らせられたけれど、ボールの上に寝ているヤツらがいても、審判は彼らを罰しなかった」と、無念のコメント。

試合の後、フランスの選手達がしんみりと記者会見をしているところに、アルゼンチンの選手達が大騒ぎしながらやってきて挑発した、なんてこともあったらしいです。やっぱりフランスはアルゼンチンとは相性が悪い。相性が悪いというよりは、「カモにされている」と言った方が正確かもしれない。
テクニックと情熱とマリーシアが渾然一体となったカオスのような彼らのラグビーは、やはりとてもフット的。しかしフットならともかく、「ラグビーがそれでいいんだろうか」という疑問も脳裏をよぎるわけです。つまりいわゆるラグビーの精神というやつです。

フットは純然たるスポーツというよりは、例えばスペインの牛追い祭りみたいな毎年死傷者を出しながらも続いていく年間儀礼、共同体のガス抜きに近い機能も果たしている。スーペルクラシコに沸き立つボンボネーラの熱狂的な映像はある種の畏怖さえ抱かせるものだけど、もし彼らからあのお菓子箱を取り上げたら、あの狂騒はどこへ行く?様々な国、様々な層の人々、混沌とした世の中を受け入れるフットにはそれなりの「幅」が要ります。
けれど私はラグビーを見始めた頃、ラグビーはもうちょっと理性的領域のスポーツのようだと思ったし、そこが気に入った。フランスのラグビーファンを見ていると、ここではいいスポーツ文化が育まれているんだろうなとうらやましく思う。世界中に広がったラグビーはますます変容していくだろうけれど、それでも守られるべきものは何だろう、そういう話です。私はまあとんでもなく荒くれなサポを抱えるフットクラブのファンでもあるし、フットの文化に半ばウンザリしてラグビーを見始めたから、なおさらそう思うのかもしれない。「これじゃフットじゃないか」

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