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2007.02.23

 ラグビーはアイルランドをひとつにする

Ireland歌う人、歌わない人。
さて、「ラグビーはアイルランドをひとつにする」というAFPの記事なのです。まあ私の個人的予習用エントリです。

これまではゲーリック・フットボールやハーリングなどのゲーリック・スポーツ専用スタジアムだったというダブリンのクローク・パーク。先々週のシックスネイションズ、フランス戦では、このスタジアムで初めてラグビーの試合が開催されることが話題になりました。
そして今週土曜には、アイルランド独立のシンボルでもあるこのスタジアムで、建国以来はじめてゴッド・セイヴ・ザ・クイーンが82,000人の観客の前で演奏されることになります。


─土曜、アイルランドフィフティーンによって“熱烈に”迎えられることになるのは、歴史上の敵である。この試合について、元アイルランド代表ポール・ウォレスはこう考えている。「アイルランドはその過去と和解したことを証明するだろう」
しかし、ゲーリック体育協会(GAA)にとって、クローク・パークをいわゆる“イングランドのスポーツ”に開放し、彼らがそこでゴッド・セイヴ・ザ・クイーンを歌うことを受け入れるのは、簡単な決断ではなかった。

1920年、独立戦争のさなかに、イングランド軍がスタジアムの観衆に向けて発砲し13人が射殺された。死亡したのは12人の観客とティペラリーのチームの主将である。戦争の記憶はいまだ生々しい。
「ラグビーはもっぱら、アイルランドでイングランド兵が行う“駐屯部隊”のスポーツだと言われていました。我々はイングランドのスポーツがクローク・パークの芝に踏み込むなどということは冒涜だと考えていた。しかし我々は新しい時代に入ったのです」、とウォレスは説明する。
国境にもかかわらず、ラグビーは全島でナショナルチームが1チームしかない唯一のスポーツだ。それはカトリックとプロテスタント、アイルランド共和国の選手と北アイルランドの選手で構成される。─


事情に詳しくないので誤読・誤認があったら申し訳ないのですが、記事によると、今回の開催にいたるまでには「ラグビーはもう特権的なエリートやプロテスタントのものではない」として、アイルランドとイングランドのスポーツ関係者が熱心に活動していたとか。
また、トレバー・リングランドのような何人もの元代表選手が、アソシエイション“One Small Step”のおかげで、プロテスタントとカトリック間で和解してきたのだと。

元アルスターのウィングであるリングランドは、「北アイルランドの市のほぼすべてが我々の発意を支持している。紛争の間、他が北と南の関係を絶とうとしていた時に、ラグビーはこの絆を維持することができた。もし我々が共に働けば、我々の社会の中にあるいくつかの障壁を壊せるということを、我々はスポーツによって証明した」、と。
何年か前まで北アイルランドのカトリック系の高校ではラグビーが禁止されていたそうですが、今は解禁され、アイルランドラグビーの新たな発展につながることも期待されています。

今回のことで、南アフリカW杯で黒人選手を招くのに、ネルソン・マンデラがかつて人種差別のシンボルとみなされていたスプリングボクスのジャージを自ら着たことを思い起こした人もいるようです。が、アルスターでは先週、一部のサポーターが試合中にニューポート・グウェント・ドラゴンズの選手に対して人種差別的なスローガンを叫んだことが問題になりました。スポーツのかかげる理想が、人々の根深い感情をどこまで動かせるかはわかりませんが、よい試合になるといいですね。
私個人は、スポーツ(のみならず)はその発祥よりも、それぞれの土地の文化の中ではぐくまれ変容し、人々のものになることの方が大事だと思うのです。

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Comments

歴史的一戦なんですね。
最近「麦の穂を揺らす風」を観たので、生々しいです。映画にはハーリングをするシーンもあります。ケン・ローチが見たらどんな事を言うんだろうな、なんてちょっと思う。

これまで何となく手付かずにしてたアイルランドについて、今更勉強し始めました。ユナイテッド・ファンなら必須事項なのにね。とりあえずシバリョーから・・。

先日のエントリもですが、つきさん文章が上手いなあ。
週末の試合、出来るだけ観ますワ。それにしてもウェールズは勝てるんでしょうかww


Posted by: minaco. | 2007.02.23 at 00:31

歴史的和解の日だったようですね。反対派のデモもあったようですが…

>「麦の穂を揺らす風」
ああ、見なくちゃ…。ちょうどクローク・パークの血の日曜日と同じ頃の話ですね。ハーリングってどういうスポーツなのか見てみたいし。ただ重そうだなあ。私はタヴィアーニ兄弟の「サン・ロレンツォの夜」(だったかな)が好きだったんです。戦争の話だけど子供視点(の回想)だから不思議な感じで。

ウェールズはシェーン・ウィリアムスが髪切ったのがなにげにショック。

Posted by: つき | 2007.02.25 at 23:11

久々にお邪魔します。

ランズダウン・ロードじゃないアイルランドのホームゲームとは、初耳ですね。
ゴッド・セイブ・ザ・クイーンを聞かないというだけの理由で、アイルランドのホームゲームではいかなる対戦国の国歌も演奏しなかった・・・・という歴史が変わったんですね。
北アイルランド国籍(?)選手も一緒に唄えるようにと、アイルランズ・コールがお披露目されて、気づけばはや12年ですが、またひとつ大きな封印が解けたのか・・・・・
肩を組んで全力でアイルランズ・コール唄うアイリッシュたちに対し、我らがジャパンは無言で下向いたり柔軟体操したり・・・・
ほとほと失望したのを、今でも覚えています。
そういえばポール・ウォーレスって、そのとき日本と戦ったウィングでしたね。
プロップには兄貴のリチャード・ウォーレスがいました。

しかしW杯の年だというのに、全然選手のチェックもできてません。(汗)

Posted by: フランコ将軍 | 2007.03.15 at 22:14

こんにちはフランコさん、ランズダウン・ロードは改修中なんだそうですね。
アイルランドでもHOのフラナリーは南のリムリックの出身らしいけど、どっちのアンセムも歌わないですね。でも、歌にはしなくても心に秘めた思いは同じなのではないかと、彼の涙を見ていて思いました。歌う自由、歌わない自由が許容される社会にいるのは、ある意味幸せなことなのかもしれません。まあ日本の場合は、そういうのとはちょっと違うかもしれないですね。柔軟体操はマズイですなあ…。
ウォレスは兄弟選手だったんですね。兄がプロップ、弟がウィングというのはなんとなく気質的にそれらしい。

私もW杯の予習がてら、こうして記事をアップしております。南半球も覚えないと…

Posted by: つき | 2007.03.16 at 23:26

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