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2006.12.28

キニナル絵画 名画建もの探訪

Am(←クリックすると大きいサイズになります)
大きい家に住みたいとかはそれほど思わない。まあ程度の問題だけど掃除が大変だし、何よりなんとなく居場所が定まらなくて落ち着かない気がする。猫はその点を分かっていて、常に寄りかかるものを探している。猫は「ほんとにそれに入るの?」っていうくらいキツめのダンボール箱にきゅうきゅうにつまるのが好きだ。そしてダンボールの方が猫に合わせて形を変えていく。
日常を離れて考え事をしたい時などは、小さなコクピット的空間にちょっと憧れる。

そんな意味でも心魅かれてしまう絵が、アントネッロ・ダ・メッシーナの「書斎の聖ヒエロニムス」(1474-75年頃)だ。意外と小品だというのもソソる。聖ヒエロニムスはラテン教会の四大教父の1人で、絵画作品に描かれる時には、荒野の改悛者や書斎で思索する学者、教会を守護する枢機卿などの姿をとる。この作品は、修道院の一室で聖書を翻訳中のヒエロニムス。
しかし変わった建築である。実際の修道院にはさすがにこんな構造物はないんじゃないか。他の坊さんは通るわ、ライオンはウロウロするわじゃ思索どころじゃありません。聖人が暮らしたベツレヘムの修道院と、その書斎の内部を同じ画面におさめる必要性からこうなっている。宗教美術は1枚の絵でいろんなことを説明しなけばならないので、どうしてもこうなる。

Adそれにしてもこの書斎が好ましい。ユニット書斎。手持ちの画集ではよく見えないけれど、階段の下に革のスリッパらしきものが脱いであるのを見ると土足厳禁かもしれない。脱ぎ方からして、聖人はそれほど几帳面じゃないようだ。この小さな階段を上ったところに盆栽物件があって、この先が知的小宇宙であることを暗示している。全体にちょっとインドのジャンタルマンタルを思い出したりするのは、やっぱり宇宙なんだな。
その左端に猫。絵の具の剥落の感じを見ると後世の加筆かもしれないけれども、ともかく猫。同じテーマのデューラーの版画(1514年)では、前景に描かれているのはまどろむライオンと犬。アントネッロ・ダ・メッシーナの方ではライオンは活動中なので、小さな書斎で寝てても絵的に邪魔にならないサイズのネコ科が代わりにウトウトしている。このライオンには聖人に足の棘を抜いてもらった恩がある。

全体の幾何学的な構図の中で、聖人の赤い衣のひだには動きがあり、白い袖の質感は壁にかかったショールの白と響き合っている。書斎に置かれたこまごまとしたものがまたよろしい。研究に没頭する聖人を中心とする重力の輪の上に、均衡をとりながら配置されている。椅子も好ましいし、後ろの赤い帽子がのったチェスト、これは私もホシイ。こんなシンプルなのがアンティークショップなんかじゃむちゃくちゃ高い。

Am3アントネッロ・ダ・メッシーナという画家は、たとえば建築やインテリアに凝る人にはけっこう琴線に触れる画家じゃないかと思う。「聖セバスティアヌス」では、矢に射抜かれてタラタラ血を流す若い聖人の背景に市民の日常生活が広がっていてまたシュールなんだけど、門のアーチの上にテキスタイル物件がかかっていて、どうもそこに目がいく、というか、そういうふうに描かれている。聖人というより遠近法描きたかっただけちゃうんか。人体自体が建造物みたいでもある。
私は特に凝らないけれども、「受胎告知」の聖母マリアの書見台もなかなか好みだ。

つまりアントネッロ・ダ・メッシーナの絵を鑑賞する時、人は渡辺篤史になる。篤史のごとく建築を堪能し、インテリアをためつすがめつし、窓からの眺めに感嘆し、ペットと強引な交流を試みるのである。外の庭では柳生真吾が寄せ植えを作っているかもしれない。

渡辺篤史の建もの探訪
http://www.tv-asahi.co.jp/tatemono/

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Comments

恥ずかしながら美術の素養もないワタクシですので、このシリーズで勉強したいと思います。
今後の展開が楽しみです。

で、建もの探訪・・・といえば、下記の素晴らしいバカ映像を是非(完璧シンクロしてるぅ~!)。
http://www.youtube.com/watch?v=Ebsxue9eSCM

今年も宜しくお願いします。

Posted by: minaco. | 2007.01.11 at 01:07

事実1割、妄想9割(いやもっとだな)のエントリなので、くれぐれもまじめに受け取られませんよう…。次のエントリはどうしようもない下ネタになる予定です。

>建もの探訪
ナニコレww ハライタイ~
何この風呂。でも実際、篤史はどんなお宅でも冷静に誉め殺すと思う。

かさねがさねよろしくお願いいたします。

Posted by: つき | 2007.01.11 at 17:08

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