« この子は誰の子 | Main | メリークリスマス »

2006.12.20

フットとラグビーとレイシズム

Szarnyang

フランス代表のマイヨを着た仲良しの2人、スザルゼヴスキはポーランド系、ニヤンガはザイールの出身。フランスのスポーツにかかわっていると、常に人種や民族といったものを意識せざるをえないところがあります。関係者もメディアも、特に人種差別の問題には非常に敏感です。
「選手のオリジンは尊重しなければならない」というのは、この4年ほどPSGサイトをやってきて(反省すべき点も多々あるけれども)切実に感じることですね。パリにはいくつもの移民のコミュニティがあって、コミュニティに属する選手達は自分のオリジンにとても誇りを持っているし、コミュニティの社会的評価を上げるためにも頑張るわけです。
ただ私個人は、スポーツを取り巻くレイシズムについて何かを言うのには慎重…というのは、私は現地の事情を見知っているわけではないし、あまりにも問題が大きく複雑でデリケイトだと思うから。

人種差別的傾向を持つPSGの一部ウルトラの問題は、最近では死者も出る事態になっています。実際のところ極右の問題は移民の集中するヨーロッパの都市部にはつきもので、複雑な社会状況がからんでおり一面的な視点で言及するのはとても難しい。人口が多く、民族も階層も多様なパリではそれだけ摩擦も大きいんだろうけど、その軋轢がフットボールのスタジアムにダイレクトに反映されてしまうのは、スタジアムが広範な層に「開かれている」ものだからじゃないかと思います。良くも、悪しくも。
フットは全世界に膨大な数のファンを持つ巨大なスポーツ。だからフットには常にそういった多様性や“混沌”を受け入れる幅が必要になる。でも膨れあがる社会不満のガス抜きの場としては、スタジアムはすでにあまりにも小さい。いちフットボールクラブでどうこうできるレベルの問題じゃないはずなのね。

2年ほど前にPSGの会長グライユは、スタジアムのバイオレンス追放のためチケット販売に身元証明を義務づけようとしたのだけど、サポーターグループの組織的な反対運動にぶつかった。で、この種のトラブルのイメージにナーバスな株主のカナルプリュスは、成績不振もあってグライユをクビにした、という経緯があります。ちなみに、当時この問題にはあまりかかわりたがらなかったLFP会長のティリエは、最近になって、「300~400人のフーリガンを追放すればパルク・デ・プランスは平和になる、私は2年前からそう言っているのです」だって。フン。
いずれにせよ、父親が息子に愛するクラブの試合を見せようとやってくる親子連れのような多くの普通のサポーターが、“差別主義者のPSGサポーター”というマスイメージで十把一絡げにされるような事態にはウンザリしちゃうのだ。だけどひとつ言えるのは、これは必ずしも「PSGの問題」ではないよ、ってこと。これからあちこちで同じようなことが起こると思うよ…


Lirish自分がまだ何かしらイワユル「スポーツの精神」に期待をかけているラグビーの世界でも、先週末はいろいろとレイシズムの問題が報道されたのです。
1つはハイネケンカップ。ロンドン・アイリッシュはFBのDelon Armitageに対するアルスターの選手達の人種差別発言について、ERC(European Rugby Cup)に断固提訴する構えである、というニュース。

もう1つはフランスProD2、ポー対トゥーロンで起きた出来事。この試合の終了直前、ポーの2列Jeannard(元ベジエなのか、ディミトリやニヤンガとスクラム組んでた選手なんだな…)とトゥーロンの南アフリカ人選手Van Vlietの間で口論になり、Jeannardがグラウンドを下りてしまった。引きとめようとするチームメイトとコーチ。試合は混乱の中で終了の笛が吹かれた模様。Jeannardによれば、彼はVan Vlietから「耐え難い人種差別的な侮辱を受けた」。喧嘩になるよりはグラウンドを去る方がよかったのだと説明しました。
試合の後、ロッカールームに向かう通路で、Van Vlietはポーの選手達と何人かのトゥーロンのチームメイトに取り囲まれて叱責されたらしい。騒ぎがひとまず収まると、トゥーロンに所属しているタナ・ウマンガがJeannardと話に来て、彼にマイヨの交換を申し出た。トゥーロンの会長も同様にJeannardに謝罪しに来たそうです。

こういったトラブルがたとえばサポーターの野次などでなく、グラウンド内で起きたことだったのは、当事者がはっきりしているだけに相互理解のしようもあるだろう、という点ではまだよかったかもしれない。かつてPSGに所属したアルバニア人選手が、ラフプレーに怒った相手チームの監督から差別的発言を受けて騒ぎになったことがありました。その選手は「告訴は何の役にも立たない。相手チームの監督とは1対1で話し合いたい」と言ったのですが、それはまあ、見識だと思う。
PSGの会長はその時、「ああいった言葉がパリの監督の口から発せられたものなら、自分はサッカー界からの反応を想像する勇気がない」と言った。フランスのスポーツにとって、レイシズムの問題はとてもとてもデリケイトだ。

|

« この子は誰の子 | Main | メリークリスマス »

Comments

ところで、かねてより謎だったのですが、フランスは何故に(いわゆる)単一民族ではないのに、あんなにパスワークが凄いのでしょうか??

同じように、いろんな人種がいる豪州は、多い時は7次攻撃まで先に決めてあって、その流れで動くしかパスは繋がりにくいのですが、サッカーにしてもフランスの芸術性は見事ですし、なぜなんでしょう??

PS.
ネコが足を舐めてる・・。
初めて見た!!
得した気分です。。

Posted by: ひろどん | 2006.12.21 at 00:20

ウ~ン。そこが分からないのがフランスのラグビー?あの真似はどこにもできない、ってよく言いますね。ヤシュヴィリのパス出しなんかは結構トリッキーだと思うんですが、短期間の練習で合わせていたりするし…
外国にルーツがある選手も、多くは2世3世や子供の頃にフランスに渡ってきた選手だと思いますし、育成の段階でどういうトレーニングに重点を置くかとか…。
フランスはやっぱりああいうつなぐラグビーに対する美意識があるんでしょうね。子供の頃からそういうイメージングをしてるのかもしれませんね。スミマセン、私も分からなかった(汗

今日は後ろのクリスマスツリーに飾りがつきましたよ。

Posted by: つき | 2006.12.22 at 00:26

なるへそーー。

いずれにしても、日本人には無理だったでしょうか。。


ホントだ、飾り付いた!!
温度を示す画面に、coolやvery coolとか出てたのですね。。

Posted by: ひろどん | 2006.12.22 at 08:12

ある程度出来上がったチームや選手にアレを導入しようというのは、どうでしょうねえ…。私のようなニワカが偉そうなことは言えないけど、協会に足りないのはビジョンじゃないかと思います。

Posted by: つき | 2006.12.23 at 01:48

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/91018/13130817

Listed below are links to weblogs that reference フットとラグビーとレイシズム:

« この子は誰の子 | Main | メリークリスマス »