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2006.06.13

風景写真の快楽

Matsue電車に乗って高架からボンヤリ町並みを眺めるのは好きで、人間小さいよなと思うこともあれば、すれ違う無数の一瞬の日常にクラッとする時もある。ブリューゲルの“雪中の狩人”を見るような感じというか。猫が無防備に屋根の上で眠り込んでいたり、草むらで踏ん張っているのを見つけると、ふふん油断しちゃって、なんてニヤニヤしたりするものです。
それはさておき最近、俯瞰的に風景を撮影した写真が目につくような気がしていて、それが個人的な気分なのか、世の中的な流れなのかは分からないけれど、それらはどこか似た視線を持っているように思ってました。

今月の美術雑誌に、ミニチュア模型みたいな風景写真を撮る若手写真家、本城直季のインタビューが載っていたんだけど、このテの写真のコンセプチュアルな側面、つまり自然と人工とか、虚構と現実とか、人間の営みなんてちっちゃいものだよねみたいな説明は、されてしまうとかえってつまらない場合もあるもので。
この方の写真の場合、最初に目を惹くのは何よりそのスタイルからくる驚き(現実の風景がミニチュアに見える!)なんだけど、本質的にはもう少し情感的なレベルで見られてしまうような写真なのかもしれないし、何となく今の時代の気分に消費されそうな…ちょっと危うい感じ。
http://www.stairaug.com/ARTIST/honjo/img/002.jpg

そもそもは、何ヶ月か前に同じ雑誌で見た松江泰治の写真がずっと気になっていたんです。“JP-22”というシリーズの、富士川河口を上空から空撮した1枚で、一見して抽象画かと思い、よく見ると河口から暗い色の海に伸びた砂州に、筆で刷いたような波やタイヤの轍が走り、その上に点々とした車や人が小さく、何かの奇跡のようにそこに。
http://www.taronasugallery.com/pub/023.jpg
http://www.taronasugallery.com/exh/054/1.jpg

何かひどく感じ入ってしまって、同じ写真家がイギリスとスロバキアの風景を撮影した写真集を購入(画像)。主に町並みや建築物が、大部分は高い場所からほぼ同じアングルで撮られ、左右のページに、おそらくは非常な厳しさをもって併置されています。
それは近代建築と古びた町並み、あるいはイギリスと旧共産圏のコントラストだったりすることもあれば、違う町の風景があたかもひとつながりの写真のように置かれていることもあるし、あるいは、草上でモデルの撮影をする人々ののどかな光景と人気のない墓地が─それぞれまったく等価に─並べられていることもある。

写真集の帯には「神は細部に宿る」という、建築家ミース・ファン・デル・ローエの言葉が引いてあって、そのとおりに視線は細部にのめりこんでいき、そうして写真は「物語的機能を失調」してしまう。
周縁がトロンとピンぼけした本城直季の写真にちょっとだけもどかしさを覚えたり、作為が出すぎているように感じるのはそこなんだろうなきっと。

“JP-22”の空撮写真では、ヨーロッパの町並みのシリーズで見られたような高度でのディティールは当然とんでいるのだけど、芥子粒のような車や人影に気づいて、そこからイメージが風景として再構築される瞬間はかなり刺激的といえます。
風景がかくも厳しく、しかし快楽的に写し出されていることの驚き。「神の視点」といえばそうかもしれない、が、日本人の自分の感覚としては神々はやはり万物の細部に宿り、その交歓に何かこう、「梵我一如」という言葉を思い出してしまった。写真集欲しいけど高ス。

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