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2006.02.02

ビザール・ラブ・トライアングル(映画“バッド・エデュケーション”)

DVDを買ったまま、なかなか見る時間がなかったペドロ・アルモドバルの“バッド・エデュケーション”を見た。過剰な色。でも映画が半ばまで進んだところで、ああこの鮮烈さはデイヴィッド・ホックニー的なあれじゃないかな、とふと思ったのだった(そういや今はどうなってるか知らないけど、ホックニーのカリフォルニアの自宅は原色の青と赤に塗られてました)

この映画の中でとりわけ印象的なスイミングプールのシーンを見ていて、まず思い出したのはホックニーの絵“ある画家の肖像(二人の人物のいるプール)”だった。背後に山並みを見晴らすプールで、水中を泳ぐ男と、覗き込むようにプールサイドに立つ赤いジャケットの男(モデルはホックニーの恋人だったピーター・シュレジンジャー)。アクリルのクリアな、やや空々しい発色。

描かれた2人の人物の間にはただならぬ感情のやり取りがあるようにも見えるし、一方で両者はまったく何の関係もなく存在しているようでもある。それも道理で、この絵は時間も場所もモデルもばらばらに撮られた写真を組み合わせて描かれている。ホックニーのポートレイトには多かれ少なかれそういうところがあるのだけれど、描かれた人物達の奇妙な関係は、時々ピエロ・デラ・フランチェスカやフラ・アンジェリコの宗教画の雰囲気を思い出させる。

“バッド・エデュケーション”の主人公の2人の青年が、それぞれの真意は隠したまま、様々な思惑と感情が交錯するスイミングプールのシーンは、単純にガエル・ガルシア・ベルナルが泳ぐ姿がこの絵によく似ているからだけじゃなく、その不自然で不穏な関係性においても共通しているように思う。“ムーン・リバー”をバックに、神学校の少年達が川で遊ぶ場面の、エロティックで歓喜的な‘スプラッシュ’はこのシーンには見られない。それぞれの感情は水底に沈みこんでいくばかりだ。

物語は“訪れ”の劇中劇とその中で語られる少年時代の記憶という、フィクションと(劇中の)現実が幾重にも交錯し、登場人物達の関係もまた奇妙だ。彼らは相手を愛しているのかもしれないし、いないのかもしれない。
エンリケはどこまでアンヘルの「観察者」だったのか。イグナシオにバッド・エデュケーションを施したというよりはむしろ翻弄される者にも見える神父は、フアンを通じて既に実在しないイグナシオのイメージとも情交していたのではなかったか。兄の名を騙りサハラの役を演じたがったフアンは、兄のかつての恋愛の相手と関係を持つことで、エンリケを利用しようとしながら実は自らを罰していたのではなかったのだろうか。

そして、サハラの死を演じ終えたフアンは号泣し、イグナシオとエンリケの記憶は、エンリケが最後にイグナシオの希望(彼は生まれ変わった体で初恋の相手と再会し作家として人生をやり直したかった)と死の瞬間を記した手紙を手にした時に、ある意味での(逆説的な)「成就」をする。

ホックニーの絵の参考画像は掲載できないのだけど、David Hockneyと原題“Portrait of an Artist(Pool with Two Figures)”あたりで画像検索をかけると出てくるかと思います。ホックニーにはジャック・ハザンの撮った半ドキュメンタリー的な映画(邦題が嫌い)があって、ここでもスイミングプールと裸の男達のホモセクシュアルなコードは反復されています。ただ、随分前に見たので記憶が定かでない。
それより何より、この映画が子役のバッド・エデュケーションになってやしないかが心配だ。しっかり育てよ子役。フットボールのシーンで一瞬地の子供の顔になるのがかわいかった。それにしてもDVDのパッケージのデザインはこれでいいのか。

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Comments

遂にご覧になりましたか。素晴らしい評ですね。そうか、ホックニーにそっくりですね。
実は私もあの子役の身が案じられました・・・。っていうか、あの顔エロすぎてドキドキしました。

ところで関係ない話で申し訳ないんですが、先日私は大きな勘違いをしてました。throwing copperとはアルバム・タイトルで、Liveというバンドです(紛らわしい)。
ルートがオランダの雑誌上でフェイバリットCDとして挙げてました。ええ、買いましたとも(中古で)。聴きましたとも。
ポストREMっつーか、フォロワー?米国の根暗い若者4人組の94年のアルバムです。
ヴォーカルがマイケル・スタイプそっくりで、中にはこれは***か?って曲も。ザ・ザみたいな所もあるし、この時代ならではかもしれません。トーキングヘッズのJ・ハリスンのプロデュース。
嫌いじゃありませんが。それなら素直にREMでいいじゃん、と突っ込みたくなったりもする(ルートに)。
他にもニルヴァーナとかステレオ・フォニックスとかレッチリとか好むそうで、まあグランジ&オルタナ世代といったところでしょうか。うーん、キャラに違わぬチョイスに納得。ああ、すっきりした。

ということで、ご報告まで!どうでもいい話ですみません。
さてガビーさんはどんな音楽を・・・?

Posted by: minaco. | 2006.02.05 00:50

Liveの"I Alone"や "Lightning Crashes"、"Selling The Drama"あたりの曲は当時米国でヒットしてましたので、つきさんも聴けば「ああ知ってる」と思うかもしれません。私もこのアルバムはたまに運転中に聴いてました。私は"I Alone"が好きです。ちなみに私はハードロック系のバンドだと思って聴いてましたが・・・http://music.msn.com/album/?album=29453266&song=29589743#

Posted by: miki | 2006.02.05 21:33

minaco.さん

お恥ずかしい次第です。“バッド~”は無駄な描写が全くなくて、かなり集中して見なきゃならない映画でした。どうも自分、話を読み違えているような気がします。
ホックニーは一時期好きだったんですよ。

子役やばかったですねー。半自伝的作品ってことも含めて、少年時代のシーンはちょっと「大人は判ってくれない」を思い出したりしました。

>throwing copperとはアルバム・タイトルで、Liveというバンドです(紛らわしい)。

ああ、Liveでしたか!といっても曲の方はイマイチ覚えてなくて申し訳ない。当時はオルタナな人達という認識でした。良かったら私も聴いてみようかと思ってたんですが、お話を聞く限りでは微妙…でしょうか。
実はルートの音の趣味と聞いて、なぜか「ハードロック?」と思ってました。いや特に根拠は。グランジな人だったんですね。カッコいいよルート。
ガビーをキャリントンに連れてく時、カーステでニルヴァーナとか聴かせてたのかなあ。

Posted by: つき | 2006.02.06 23:33

miki さん

残念なことにあんまし覚えてないんですよー。ヒットチャート番組とかで耳にしていたとは思うんですが。聴けば思い出すかな…(このURLのは無料で聴ける…?)。

多分私がオルタナブームに疲れて、UKに逃げてた時期じゃないかと。その頃はパルプの“His 'n' Hers”とかディヴァイン・コメディの“Promenade”とかをよく聴いてたような気がします。
REM+ハードロック??

Posted by: つき | 2006.02.06 23:52

曲名の前のPlayボタンをポチッとやるとサワリだけ聴けます。あの頃米国に住んでると逃げ場がなかったんですが、休みに帰国すると「わー!日本の人はパールジャムとか全然聴かないんだ!スゲー!」と感動しきりでした。アムラーとか言ってた頃。

なんとなくジャケットがデスメタルっぽかったから、という勘違いです・・・。

記事と全然関係ないコメントですいませんでした。私は玄関にホックニーのMount Fuji and Flowersの1メートル級のポスターを飾ってますです。とても玄関ぽいです(笑)

Posted by: miki | 2006.02.07 01:18

>オルタナブームに疲れて、UKに逃げてた時期
私はその頃の音楽シーンに疎くて(ラテンに走ってた)、当時のバンドとかさっぱり知らないんです。だからLiveもどう評価していいのか自信ないです。ただ印象が上記のように感じただけですので、当てにしないで下さい。すみません・・。ちなみにHMVではオルタナにジャンル分けされてました。
でも何かこの暗さ加減が・・・似合うなあと。やっぱ世代的にこの辺なんだろうなあと。

>「ハードロック?」
・・って、つきさん、いくら何でもベタすぎます~!レッチリってのもベタかもしれないが。試合に向かうカーステでは、思いっきり戦闘モードな曲かけてるそうです。

>ディヴァイン・コメディ
ちょっと懐かしいですね(持ってた気がするけど忘れた・・・)。

Posted by: minaco. | 2006.02.07 01:43

miki さん

聴けました!でもやっぱり覚えてない~。う~ん…
カートが死んだすぐ後くらいですよね。気分的にああもうこういうのはいいよ、っていうのがあったのかもしれません。
ウィーザーの1stとかは聴いてました。日本でも結構人気あったんじゃないかな、服買いに行くとあっちこっちのショップでかかってたから。フィーリーズみたいなバンドになるのかと思ってたんだけど…

>アムラーとか言ってた頃
アメリカに住んでらして正解でしたよ。

>Mount Fuji and Flowers
あ、素敵ですね。やっぱりニッポンの玄関には富士ッ。

Posted by: つき | 2006.02.09 00:17

minaco.さん

Live試聴してまいりましたが、まごうことなき当時のオルタナかと。

>ハードロック

すみません私もいかんせんベタかなとは思ったんですけど、少なくともネオアコではないだろうと。ルートはマンチェスターのバンドはどうなんでしょうね。ローゼズはオールドトラフォードの入場の時にも使ってるんだし。やっぱ戦闘モードにはイマイチなのか…

レッチリといえば、NHK-BSがウッドストック94を生中継(チャレンジャーすぎ)した時に、アンソニーがお客さんを扇動して、男も女もトップレスでぶんぶんTシャツを振り回し始めちゃってえらく笑ったことがあります。次はないな、と思いました。ルートもライブ行ってそんなことしてなきゃいいんですが。

Posted by: つき | 2006.02.09 00:45

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