肉じゃがの味
いつだったか中央線の窓から、よく晴れた空のごく低いところに、ポッポッと等間隔に浮かんだ小さな雲の列が南北に伸びているのを見たことがある。変わった雲だな、と思っていて、後日何気にタクシーの中でツレとそんな話をしていたら、運転手さんが、「多分ねーそれはカンパチ雲」と言う。うっかり「寒八雲」と変換してしまったので、なんとなくちぐはぐな話になってしまったんだけど、それはカンパチでもイワシでもなく「環八雲」、環状八号線の上空に時折発生する、のどかな光景とは裏腹の大気汚染雲らしい。
毎日ラジオをかけながら、いろんな人を乗せてタクシーを走らせている運転手さんは、いろんなことを知っているのだった。そのわりに道を知らないのがちょっと困る。
先日、食料買出しの遠征帰りに乗ったタクシーの運転手さんは、私の大荷物を見て「買い物袋って重いんだよねー」としみじみ言った。これは話の分かるおっさんだと思い話してみると、最近リストラでタクシー会社に転職したということで、今は働きに出ている奥さんと交代で夕食を作っているのだそうだ。それまで台所に入ったこともなかったけれど、男性特有の研究熱心さで、「お父さんの料理は一味違う」と言われるのがモチベーションらしい。
おいしいカレーや肉じゃがの作り方を教えてもらった。鍋に引く油に、肉を買った時についてくるラードを使うのがミソだそうだ。もちろん市販のチューブのラードなどではいけない。
後日、言われたとおりに肉じゃがを作ってみたのだけれど、もともと自分の作るものは油ひかえめなこともあり、それほど劇的な味の違いは感じなかった。というか、家族に「お父さんの肉じゃがはおいしい」と言わせているのは、単に油の違いのせいだけではないとみた、などと、ちょっといいことを言ってみる。
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