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2004.04.20

 ディスクレビュー ゴールデン・パロミノス

ReviewpalominosThe Golden Palominos "Visions of Excess" (1985)
Peter Blegvad "King Strut & Other Stories" (1990)

普段はバンドであれソロであれ、いっとき個々の活動を離れて、実力派ミュージシャンがジャンルを越境して顔を合わせる作品を聴くのは、いつだってスリリングで楽しい。元フィーリーズ、ラウンジ・リザーズのドラマー、アントン・フィアがNYアンダーグラウンド・シーンを中心とする多彩なミュージシャンと組んだユニット、ゴールデン・パロミノス。その2枚目のアルバム“Visions of Excess”(85年)も、そんな作品。

パロミノスはアルバムを出すごとにサウンドもゲストの顔ぶれも変わる変則的なユニットで、本作にはビル・ラズウェル、アート・リンゼイ、リチャード・トンプソン、マイケル・スタイプ、ヘンリー・カイザー、カーラ・ブレイ、クリス・ステイミー、バーニー・ウォレル、ジャック・ブルース、シド・ストロウ、ジョディ・ハリス、ジョン・ライドンといった、一癖も二癖もある個性派が参加している。アントン・フィアのこういうセンスは好きだ。一体どんな音に仕上がってるんだろう?という顔ぶれだけど、音の方は硬質ながらルーツ・ロックの香りのする、意外にもポップなもの。

とは言っても、やはり単なる懐古ロックでは終わらないのがこのメンツで、ハイレベルなミュージシャン達の個性がぶつかり、融合する心地よい緊張感、疾走感は、あたかも夜の荒野を疾駆する一群の野生馬、といった光景を思わせる(実際、パロミノとは月毛の馬のこと)。“Omaha”でヘンリー・カイザーのギターが切り込んでくる瞬間のスリルなどは、この種のアルバムならではだろう。
どことなく孤高感を漂わせたマイケル・スタイプのヴォーカルとリチャード・トンプソンのギターの呼応が印象的な“Boy(Go)”、うねるスライド・ギターとキーボードにジャック・ブルースとシド・ストロウのヴォーカルが絡み合う“Silver Bullet”など、それでもやはりNYのミュージシャンらしいクールな熱気を帯びた、濃密な8曲。そう言えば、マイケル・スタイプが歌詞をはっきりと歌い始めたのは、この辺りからじゃないかと思う。

1stアルバムのパロミノスは、いわば直球のアヴァンギャルドだったけれど、この“Visions of Excess”を聴いて思い出すのは、デザイナー・山本耀司の「アヴァンギャルドとはぎりぎりの、これ以上後へは引けないエッジのような所で表現されたもので、単純に何かを壊したりねじり回したりするようなことではない」という言葉。このアルバムがあくまでもポップ・アルバムのフォーマット上にあるのは、逸脱する多様な個性に1本の共通のラインを引くための、ゲームの規則といったようなものでもあるのかもしれない。

リトル・フィート初期の名曲“I've Been The One”のカヴァーで幕を開ける3rdアルバム“Blast Of Silence”は、引き続き前作のルーツ・ミュージック路線を継承しているけれど、“Visions of Excess”に比べると、幾分、リラックスした雰囲気だ。
ここではアントン・フィアと並んで、元スラップ・ハッピーのピーター・ブレグヴァドが演奏、ソングライティング両面で重要な役割を果たしている。フィア、ブレグヴァドとマシュー・スウィートの共作“Something Becomes Nothing”は、ブレグヴァドのXTCのアンディ・パートリッジとの親交もなんとなく納得のいく佳曲。マシュー・スウィ-トとかあの辺りのポップは1、2曲ならいいけれど聴いているうちになんとなく鼻についてくるところがあるのだけど、ここではパロミノスのストイックなサウンドとスウィートの甘めのヴォーカルがいいバランスだ。

このピーター・ブレグヴァドのソロ作“King Strut & Other Stories”は、個人的に最も好きなアルバムの一枚。90年にリリースされたこのアルバムはクリス・ステイミーとの共同プロデュースで、ゲストにアントン・フィアやシド・ストロウと、パロミノス人脈の延長上的な雰囲気もある。アンディ・パートリッジのプロデュース曲も収録されている。
元dB'sのピーター・ホルサップル(パロミノスは3rdで彼の曲をカヴァーしている)も参加していて、何曲かでステイミーとホルサップルの共演があるのも初期dB's好きにはなんとなく嬉しい。フォーク・テイストにブリティッシュ・ポップ的な捩くれたセンスもあって(本人はNY生まれロンドン育ち)、それでも繊細で美しく抑制の効いた隠れた名盤だと思うのだけど、やっぱり、地味なのね…

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